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肩書きを名乗ったことで始まった、今の働き方。私が「文具プランナー」として働き始めるまで。

2016.06.24

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はじめまして、文具プランナーの福島槙子(ふくしま まきこ)です。……と突然自己紹介をしてみましたが、おそらくほとんどの方が今「文具プランナーって何!?」と頭の上にはてなマークを浮かべていることでしょう。

それもそのはずです。この「文具プランナー」という肩書きは、1年半ほど前に私が勝手に作り、勝手に名乗り始めたもの。ですから、ほとんどの人が初めて聞く言葉だと思います。

「文具プランナー」とはなんなのか。なぜ私がこの肩書きを名乗って働いているのか。そして「文具プランナー」と名乗って働くことで、どんな変化があったのか──。今回はそれらのエピソードを交えながら、“働く”ということについての私なりの考え方をお話ししたいと思います。

なぜ「文具プランナー」と名乗っているのか

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「文具プランナー」とは、文具のある生活を企画・提案し、その人その人のライフスタイルに合った文具の楽しみ方を見つけるお手伝いをするスペシャリストのことです。

具体的には、Webや雑誌など各種メディアで文具の情報──特に毎日の生活に関わるアイテムや、暮らしを豊かにする使い方──を発信したり、文具の選び方・使い方の相談を受け、アドバイスしたりしています。

活動の上で意識しているのは、“合う文具は人によって違うし、時と場合によっても違う”ということ。その人の好みやライフスタイル、使うシチュエーション、求める使用感や価格帯などによって、同じ文具でも使いやすい場合もあればそうでない場合もあるし、楽しい気分になれる場合もあればそうでない場合もある。だからどこかの雑誌で紹介されていた文具、プロが薦める文具をやみくもに使ってみても、良さがわからないということは頻繁にあるのです。

でも、私はひとりでも多くの人に、自分にぴったりの文具を使ったときの喜びを感じて欲しい。毎日、何気なく文具を使う瞬間に、「このペン書きやすい! なんだか仕事が捗る気がする」「お気に入りのこのノート、使っているだけで楽しい気分になれるなあ」──そんなふうに思ってほしい。

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いうなれば、それぞれのカップルの相談に乗り、サポートをしながら、一緒に2人だけの特別な結婚式を作り上げていく「ウエディングプランナー」のような役割を、ひとりひとりの“文具のある生活”において担いたい──そんな思いから、ライフスタイルや好みに合った文具の楽しみ方を見つけるアドバイスをする人、という意味をこめて「文具プランナー」と名乗りはじめました。

ただの文具好きだった私が“文具のプロ”として有名に

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これまで文具に関する仕事をしたことは一切ない、ただの文具が好きなだけの私でしたが、「文具プランナー」の肩書きを名乗りはじめたことでさまざまな変化が起きました。

名刺やSNSのプロフィールに「文具プランナー」の肩書きを書いたことで、「なんだか文具のプロらしい」と思ってもらえるようになり、「どんなお仕事をしているんですか?」と聞かれる機会が多くなりました。もちろん、はじめは何の実績もありませんでしたが、前述したようなことをそれらしく話しておきました(実際に情報発信もしていましたし、身近な人の相談には乗っていましたから、ウソではありません)。

ちょうど文具プランナーを名乗り始めたのとほぼ同時期に、仲間と文具に関するウェブマガジン「毎日、文房具。」を立ち上げ、一方では「文具lady.」という女性2人組文具ユニットとしての活動もはじめました。「毎日、文房具。」の編集長・たかたくも以前から「文房具&手帳アドバイザー」と自ら名乗っていましたし、「文具lady.」の相方である菅未里にも「文具ソムリエール」という肩書きがありましたから、「私も何かしらの肩書きを名乗るべきだわ」と思ったのは自然なことだったのでしょう。

するとまもなく、文具関連のお仕事の依頼をいただくようになりました。例えば、雑誌の特集用に文具のセレクトを頼まれたり、テレビの情報番組から文具についての解説コメントをお願いされたり……。

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ありがたいことに、文具に関する活動はトントン拍子に進み、着々と実績を重ねていきました。そして1年半ほど活動を続けた現在、文具好きの方々や文具メーカーの間ではある程度名の通った存在になることができました。

テレビや雑誌への出演や取材のオファーが定期的にくるようになり、ウェブで記事を書けば多くの人に読んでもらえるようになりました。文具メーカーさんからは「新製品を見てもらいたい」「商品に関する意見がほしい」と頻繁にお声がけいただきます。小売店からは文具売場の企画を頼まれることも。1年半前まで文具を仕事にするなんてまったく思っていなかった私が、です。自分でも正直驚いています。

成功の理由は“やれること”ではなく“やりたいこと”をはじめたから

なぜ文具の仕事がうまくいき、業界内でこういった存在になれたのか考えてみると、理由のひとつは「やりたいこと、仕事にしたいことをとりあえずはじめてみたから」だと思っています。

正直なところ、文具は好きでしたが、それほど詳しいわけではありませんでした。私より文具に詳しい方なんてたくさんいますし、もっと以前から文具を仕事にしてきた方もたくさんいます。でも私は「文具が好き」、「こういう活動がしたい!」という気持ちだけで、肩書きを名乗り、メディアを作り、ユニット活動をはじめました。半ば見切り発車のようなことができたのは、とにかく文具に関する活動がしてみたかったからというのもあるし、文具に詳しくなくても、経験がなくても、自分にできることがきっとあると感じていたからです。

するとすぐに結果はついてきました。もちろん「文具プランナー」を名乗りはじめてから、文具に関することをたくさん勉強しましたし、すこしでも多くの文具に触れようと努力しました。新しい情報や知識を積極的に取り入れました。それはもちろん今でも、です。

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でもそうやって学ぶこと、努力することはまったく苦ではありませんでした。やっぱり「好きなこと」「やりたいこと」だったからなのでしょう。

いつのまにか、私は文具のプロだと周りから認められるようになっていました。もちろん今でも、文具については勉強中です。知らないことがたくさんある。ずっとずっと学び続けたいし、新しいことを知りたい。

「好きだから」「やりたいから」です。

よく、「“好きなこと”、“やりたいこと”と、“やれること”は違う」と言います。本当にそうだと思うし、多くの場合、人は自分がやれることを見極めて、仕事に就くのだと思います。

でもできれば誰だって、好きなこと、やりたいことを仕事にして、生きていきたいと思っているのではないでしょうか。

「やりたかったのにできなかった」経験と、「できるからやった」経験

実は私は「文具プランナー」を名乗り始める前から、すこし変わった生き方・働き方をしてきました。

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ともに教師だった両親のもとで生まれ育ち、幼少期から成績優秀な優等生だった私。内気な性格でしたが、昔から根は頑固だったのだと思います。中学、高校では成績はほぼ常にトップ、それでも有名大学には進学せず、当時の夢だった美術品や文化財の保存修復家になる勉強をするため、周りの反対を押し切って、保存修復の勉強ができる東北の美大へ進学しました。大学在学中も成績は優秀でしたが、途中で病気を患い、大学を中退します。

このとき私は、“やりたいことができなくなる”という経験をしました。

その後は療養しながらしばらく引きこもりの生活を続けていた私ですが、なにもしない毎日は退屈なので、インターネットで見つけた小さな仕事をするようになっていきます。“こんな私でもできること”を探したのです。

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見つけた仕事の多くはライティングの案件で、1記事書いても300円しかもらえないようなものばかりでした。でもそんな案件も数をこなしていくと、1年ほど経ったころには、私はフリーライターと名乗るようになっていました。ライティングの勉強をしたことはなかったものの、もともと文章を書くのは得意な方でしたし、器用なタイプでもあったので、クライアントや先輩から学んだことはどんどん吸収し、いつのまにかライター業である程度生活できるようになっていたのです。

毎日のように現場に取材に行き、インタビューをし、雑誌やウェブに掲載するための記事を書きました。もちろんこのころには1記事書けば5,000円〜10,000円はもらえ、中には数万円の案件もありました。

途中からウェブメディアの編集のアルバイトもはじめました。その後フリーでの経験を評価され、小さな編集プロダクションの社員になりました。私の唯一の会社員経験です。先輩たちに、社会人として、編集者としてのたくさんのことを教えてもらった1年間でした。退職後はまたフリーランスに戻り、編集やライティングの仕事をしていました。

ライターや編集者として多くの仕事を任せてもらい、たくさんの経験を積みました。私が世間に求められているのはこの能力なんだ、と強く感じていました。学歴もなく、まともに社会で働いたことがない私でも、できることはあるんだ、と。

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仕事は楽しかったし、評価されるのはとても嬉しかった。でも私は一度もライターになりたいと思ったことはなかったし、最後まで結局、やりたいからやっているのではなく、できるから、求められているからやっているのだ、という気持ちがずっと心のなかにあったのです。

肩書きを名乗ったことで「仕事」への固定観念が変化

そんななか、文具の活動が徐々に増えてくると、なんだかとても不思議な感覚を覚えました。前述のように、文具に関して学ぶことがまったく苦ではないのです。仕事のためのリサーチであっても楽しいし、興味がつきません。来る日も来る日も文具のことを考えているのに、それでもなお飽きず、街に出ると買うものがなくても自然に足が文具店に向かってしまいます。文具売場ではいつでもワクワクするし、誰かと文具の話をしているときは本当に楽しい。そんな感覚はライターの仕事をしているときにはなかったものでした。

自然と、「ああ、本当にこれが私のやりたいことなんだな」と実感しました。そして、好きなことが仕事になったという事実に、幸せを感じました。

私が「文具プランナー」という肩書きを持って働くことで一番大きな変化を感じたのは、この部分です。これまで仕事イコール自分にできること(社会に求められていること)、がんばらなければいけないこと、やらなければいけないことだと思っていたのに、すべての仕事がその限りではないんだ、と気づくことができました。

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就職したら同じ会社で定年まで働く、というかつてはあたりまえだったことが今では稀になり、例えば「YouTuber」のような、昔は存在すらしなかった職業もたくさん生まれています。以前よりも働き方が多様になった今、仕事に対する考え方も人によってさまざま。私の「文具プランナー」としての働き方や仕事に対する考え方も、そのひとつだと参考程度に受け止めていただければ嬉しいです。

(文・福島槙子)

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