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「2〜3年後、自分が何に興味を持っているかは分からない。でも、それでいいと思う」ーー サティス製薬 佐野一機氏が説く、”ドリフト型キャリア”のすゝめ

2016.06.01

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参入障壁が高く、老舗企業が多い。そんなイメージの強い”化粧品製造業界”に新興企業として参入し、新しい風を吹き込んでいる企業がある。

その企業の名はサティス製薬。彼らは、“一人でも多くの女性に正しい綺麗を”というビジョンのもと、化粧品の開発製造のみならず、化粧品スタートアップ企業に対して製品プロモーションやCRMシステムまでワンストップで支援するなど、「化粧品業界のアクセラレーター」という特異なビジネスモデルによって成長している。

そのサティス製薬の取締役である佐野一機氏にスポットを当てていく。実は彼、サティス製薬以外にも友人である、シリアルアントレプレナーの家入一真氏と共に株式会社キメラを設立し、製造業とIT企業の2足のわらじを履いている。

特異な立場で仕事をする佐野氏が歩んできたキャリアとは?その半生を紐解いていきます。

突如として見えなくなった自分の生きる道。床ずれが起きるくらいソファと一体に。

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— まず、佐野さんのキャリアについてお伺いできればと思います。これまで、どのような仕事を?

佐野:社会人のスタートは美容業界でのプレス(広報)です。その後、経営戦略やブランド戦略のコンサルタントとして様々な企業の支援をやっていました。でも、途中で何がしたいか分からなくなってしまったんですよね。

— 何がしたいか分からなくなった。それはなぜでしょうか?

佐野:コンサルタントの仕事自体はすごく楽しくて、一生やっていこうと思っていたくらいだったんですが、20代後半に”ちょっと違う”という感覚が突如よぎったんですよね。当時は、つまらない理由が何かよく分からなかったんですけど、つまらないと思ったら、とにかくやりたくない。

コンサルタントの仕事を辞めた後は、ひとまず海外をブラブラしてみることにしました。ちょっと時間が経てばそのうちやる気になるだろうと甘くみてみたのですが、帰国後もやる気が起きず……。自宅でワイドショーを見る日々を送っていました。多分、床ずれが起きるくらいソファと一体化していたと思います(笑)。僕のなかでは「ソファで床ずれ期」と言われている時代です。

— ものすごく意外でした(笑)。

佐野:生活のためにも働かなければいけなかったんですけど、何がしたいかも分からない。非常に苦しい状況で黙々と時間だけが過ぎていきました。

この時の経験は後々すごく良い教訓になるのですが、この当時はただただつらかったですね。

床ずれ期からの脱却。”何をしたらいいか分からない”状況の僕を救ってくれたのは、家入一真さんだった

— そこから、どうやって次の仕事に?

佐野:そんな状況から、僕を救ってくれた恩人が家入です。僕がコンサルタントをやっていた頃からの付き合いで、今も公私ともに仲良くしているのですが、当時の僕に「佐野さんが何かやるんだったら、資金出しますよ」と無条件で出資をしてくれた。

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XIMERA社のイベントで登壇する家入氏(右)と佐野氏

佐野:ただ、何をしていいのか未だに分かっていなかったので、お金だけある。そんな状況でした。色々と考えた結果、「オーガニックヘアケア」をやろうと思い、自分のブランドを作ることにしました。

— コンサルタントからブランドを立ち上げる人へ。

佐野:ブランド戦略のコンサルタントを通して培った、ブランドを構築する考えが通用するのかどうか。実践の意味も込めて、「Optimistic」というオーガニックヘアケア・ブランドを立ち上げました。

オーガニックヘアケアは今では確立したジャンルですが、2009年頃はまだ一部の人が使っているマニアックなものでした。僕自身もユーザーとして使っていたのですが、当時のオーガニックヘアケアはナチュラルで気持ちのいい反面、使用感が著しく悪いものが多く、そこに「ナチュラルだから使用感を犠牲にするのは当然でしょ」みたいな開き直りがあるように思えて、大きな不満がありました。

ストイックにナチュラルであることを目的とするのではなく、自分に合ったものを楽しんで選んでいけばいい、という発想から「Optimistic(楽観主義)」という名前をつけました。

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オーガニックヘアケア・ブランド「Optimistic」

佐野:Optimisticのコンセプトは美容ライターや編集者に共感してもらい、様々な人が応援してくれました。女性誌のベストコスメを複数受賞し注目を集め、大手百貨店のナチュラルコスメのスペースから声が掛かるようにもなりました。この経験から自分の培ってきた戦略理論はきちんと実践すれば形になる。そんな手応えも掴むことができました。

— その後、サティス製薬へジョインすると思うのですが、何がきっかけだったのでしょうか?

佐野:「Optimistic」の商品を作ってくれていたのがサティス製薬なんです。だから、代表の山崎との最初の出会いは製造元の社長と販売元の社長という関係です。すぐに意気投合し、しばらくしてから自然と一緒にやろうという話になりました。

もともと、「Optimistic」というブランドは共同創業者がいるんですね。最初は僕が社長をやり、ある程度形になったら共同創業者にバトンタッチする約束でした。ちょうど良いタイミングでもあったし、創業者ではない立場で経営することがおもしろそうだったので、サティス製薬に参画することにしました。

ブランドの立ち上げが引き起こした、サティス製薬との運命的な出会い。僕が「製造とITの経営」という2足のわらじを履こうと思ったワケ

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サティス製薬代表取締役社長の山崎氏(写真左)と佐野氏

— サティス製薬さんには自分から入っていたと思ったのですが、けっこう運命的な出会いだったんですね。

佐野:そうですね。自分が「Optimistic」というブランドを立ち上げてなければ、山崎と出会うことはなかったですし、サティス製薬に入ることもなかった。何もしない”床ずれ期”をずーっと過ごしていたら、今のキャリアにもなっていない。

自分のキャリアのターニングポイントには、家入と山崎という2人の起業家の存在が大きく関わっていますね。

— 現在、佐野さんは取締役として働く傍ら、かつては”起業家”としても働かれているわけですよね。なぜ、このような選択をとったのでしょうか?

佐野:キャリアの節目を決めるときは直感的におもしろそうなものを選んでいます。なので、その時点の意思決定だけ見た友人たちからすると「え、なんでそうなっているの?」という反応をもらうこともあります(笑)。そういうことが続いたので、「いまは何をやっているんだっけ?」とよくわかってもらえないこともしばしばありますね。

なぜこういったキャリアを歩んだのか、後から考えてはじめてわかる部分は多いです。例えば、コンサルタントの仕事がつまらないと感じる理由があまり分かっていなかったのですが、自分でブランドを立ち上げて、サティス製薬に取締役として従事する中でようやく分かってきた部分があります。

コンサルタントの仕事はあくまで経営者に対するサービス業であって、経営のプロになることはできない。言ってしまえば、「考えること」や「調べること」のアウトソーシングなので、経営そのものをやっているのではないのですね。

もちろん、一流のコンサルタントの方は本当にすごいのですが、僕はそこに興味が持てなかったということなんだと思います。実行まで出来なかったり、自分の責任で意思決定することにおもしろさを感じます。

— 会社の経営に興味があった?

佐野:最初から興味があったわけではなく、やりながら興味があるということを理解していった、という印象です。やっぱり、”脳みそを使うこと”と実際に”意思決定をすること”、”実行すること”がセットになっていなければ面白くないですし、そこにこそ深みがあるなと。以前、野村克也さんが「監督というのはやってみないと分からないことが多い」と言っているのを耳にしたことがあって、経営も近しいものがあります。

結局のところ、経営もやってみなければわからない。だからこそ、様々な”経営”という経験値を積むために現在、共同創業者という立場でIT企業のキメラの経営に携わっていますし、創業者ではない形で製造業であるサティス製薬の経営にも携わっています。

日本には「プロ経営者」と呼べる人材が少ない。だから僕は経営のスキルアップを図っていきたい

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XIMERAを共同創業した2015年4月頃。その後、早くも一社M&Aを主導

— そのような経緯があって、様々な立場で働かれてるんですね。

佐野:2足のわらじを履いていることになりますが、結局、これも直感的に決めているんですよね。後々、何かしらの意味になると思っているので、どちらか一方にする気は全くありません。経営というのはやればやるほどよくわからない部分が多くて、もっと経営がうまくなりたいなと日々思っています。

先ほどお話したとおり、経験しなければわからないことが多いので、30代〜40代くらいで「プロ経営者」と呼べる人材が日本に増えてくれば、もっと日本は元気になってくるはず。”後継者問題”などが至るところで囁かれているように、経営人材が不足している現状をどうにかしたい。

「プロ経営者」とは製造業だろうとIT企業だろうと「どんな会社でも経営ができる人材」のこと。もっと同世代にそういった話ができる仲間が増えるといいなと思っています。

— では今後も、”経営”を軸にキャリアを歩んでいくと。

佐野:そこは、正直、分からないですね。僕はキャリアを決めずに、そのときに面白いと思ったものを全力でやることにしています。僕は”ドリフト型のキャリア”と言っているんですけど。計画も大事なのですが、漂流するのも楽しい。

ただ、しばらくは経営にコミットすると思います。……わからないですけど(笑)。一つ言えるのは、直感的に選んだことを全力でやっていると、自然とキャリアがつながっていくし、それでいいと思っています。

(つづく)

後編では、佐野一機さんが考える「タレントが集まる組織」について伺います。

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