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プロボノ(ボランティア)メンバーが社員の2倍!? そんな不思議な会社 ファクトリエは、社長の経歴も不思議でした!

2016.08.15

IMG_0835日本のものづくりが置かれている状況が厳しい。

2000年代はじめ、長期の取引関係にあった系列解体と工場閉鎖を日産は行った。パナソニックも「聖域なき構造改革」と称して多くの工場を閉鎖。このように、日本国内の工場が次々と姿を消しつつある。

そうした中、日本各地のアパレル工場を訪れている1人の男がいる。ライフスタイルアクセント株式会社の代表取締役・山田敏夫氏だ。これまで足を運んだ工場の数は500以上。

彼(企業)のミッションは「世界に誇る“気高きメイドインジャパン”を復活させる」こと。そして「ものづくりの現場から世界一流ブランドを作る」こと。その2つを目標にしている。

同社が展開するブランドであるファクトリエは、国内の工場と直接提携し商品を企画開発、消費者へ自社ECを通じて販売している。流通のコストが抑えられるため、品質の高いものが適正価格で消費者へ届けられる。また、工場にもきちんと利益が出る取り組みとして注目されている。

だがそれだけではない。オフィスメンバーの多くがプロボノ(専門家がスキルを活かすボランティア活動)として参加するなど働き方にも特色がある。

今回は、山田氏の半生をひも解きつつ、同社メンバーの働き方も見ていきたい。

パリに留学中に驚いた!お客様は神様ではないと気付かせてくれた世界一流ブランド。

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【プロフィール】
1982年10月20日生まれ。中央大学在学中に、フランスへ留学しグッチ(GUCCI)・パリ店に勤務。卒業後、ソフトバンク・ヒューマン・キャピタル(現:SBヒューマンキャピタル。以下、ソフトバンクHC)で営業職を勤める。2012年1月、ライフスタイルアクセント株式会社を設立し、同月10月にメイドインジャパンの工場直結ファッションブランド「ファクトリエ」を開始。今に至る。

— 山田さんはご実家も洋服屋だったとか?

山田:100年続く老舗の婦人服屋に僕は生まれました。上質なメイドインジャパンに小さい頃から慣れ親しんでいました。

— メイドインジャパンに馴染んだ後、フランスに留学。グッチ・パリ店で留学中働いていたそうですね?

山田:シャルル・ド・ゴール空港から、パリ市内へ行く途中でスリにあったんです。フランスについた途端に一文無しですよ(笑)。お金を稼がなきゃならないってことで仕事をすぐに探しはじめました。30通以上手紙を書いて送ったんです。唯一返信をくれたのがグッチ・パリ店でそこで働くことになりました。

— そこで学んで今も活きていることはありますか?

山田:ものづくりに対する誇りでしょうか。僕は実家が婦人服屋だったので、お客様は神様だとずっと言われ続けたんですよ。それこそ、休みの日でもお客様がいらっしゃったら急いで戻ってお店を開けていました。

でも、グッチのメンバーはお客様が入店しようとして断ることもあります。短パンだったりすると入店拒否するのです。もうまずその時点でびっくりしますよね。お客様を神様として扱わない。それはなぜかっていうと、ものづくりへの誇りですよね。

— 日本と随分違いますね?

山田:日本は、外食チェーン店へ行けば500円くらいで食事がどんどん出てきます。

フランスだと、「おなかがすきました。まっとうなお金を出しますので食事させてください」といって、ちゃんとした料理がようやく出てくる感じです。例えば、フランスのカフェでランチを食べたら、少なくとも10ユーロ=1,140円(2016年8月中旬為替相場)です。

— た、高い! 私ならランチを諦めます。

山田:でも、フランスではこれがフェアなのです。ギャルソン(男性の給仕)もチップを要求してきます。お客様は神様じゃない、お客さんとお店の関係性がフランスでは公平(フェア)なのだと知りました。

— 日本は、お客さんが望むものをいかに出すかっていう考え方ですね。

山田:「お客様は神様」という意識が日本は強すぎるのです。誤解を恐れずに言えば、神様のお客様以外は奴隷みたいな感じにもなってしまいます。

— ものづくりにもそれが影響したと?

山田:そうなんです。500以上の工場を僕は回りました。でも、そのうちいくつかの工場は技術力があまりなかったりもします。

神様であるお客様が求めるままに、どれだけ安く作れるかが今まで問われてきました。技術よりも安さが優先されて技術軽視になり、技術力が衰えた工場もあるのです。

ソフトバンクの営業マネージャーから倉庫アルバイトへ転身。10代の若者が上司!?

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— 山田さんはものづくりにすぐ関わったのですか?
山田:僕はまず、アパレル業界に入ろうと思って、実家の取引先など、いろんな人に話を聞きに行きました。すると、「この業界は絶対に入らない方が良い」とみなが言うんです。

それを聞いて、日本のアパレル業界が厳しいならば生き抜いていく力が必要だと考えました。生き抜く力って何かというと、営業力です。

— 営業力をつける目的だけで職場を選んだ!?

山田:そのために、転職求人サービスを行っているソフトバンクHCに入りました。いろんな求人媒体の競合がいる中で、まだあまり商品力が強くなく、営業力が必要な環境に自分をあえて置いたのです。

営業力は相当つきましたね(笑)。

— かなり想定外の力の付け方ですね(笑)。

山田:想定外なら、ファッションウォーカーというEC(ネットを用いた商品売買)の会社への転職もそうですね。ソフトバンクHCでは部下を30人抱える営業マネージャーでしたが、ここへはアルバイトで入って、倉庫で物流業務をしていました。ソフトバンクHCを辞めてから1年くらい働いていました。

— ソフトバンクHCから今度は倉庫…ビックリです!

山田:驚きますよね(笑)。私がそうであるように、様々なキャリアは、最後に見たら何かにつながっているかもしれない。ですので、まずは目の前にあることを無我夢中にやることだと思います。そういう気持ちでやった物流業務の経験が、今の僕にはすごく大きいですし。

— 当時の経験で印象深いことはありますか?

山田:物流の職場は、年齢なんて関係ない。お昼になると中卒の10代の子に「山田さん、今日20個弁当買ってきて」と言われます。当時28歳の僕が、弁当屋まで走って買いに行くわけです(笑)。

— 弁当20個ですか! 印象「深い」というより「重い」感じです。

山田:重かったです(笑)。でも、苦行とは感じませんでした。もしも、仕事が苦行であるとすれば、すごくもったいないと思います。

僕は、楽しい仕事をするか、仕事を楽しむか、その2つしかないと思っているのです。当時も、今も。

社員の2倍いるボランティア?!毎夜、本業を別に持つ専門家が集うファクトリエ。

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— 2012年にライフスタイルアクセント株式会社を創業なさいました。工場直販の中抜きビジネスモデルは、他社からの風当たりは強かったですか?

山田:いえいえ。丸2年は社員が僕1人で、資本金は50万円。世田谷にあるアパートの1Kでひっそり始めたので、誰にも気づかれなかったです(笑)。

— 忍者みたいな隠密活動(笑)。それが今では、メンバーも大勢になったのですね?

山田:そうですね。今、社員数は10人くらいですが、プロボノの方を入れると30人くらいになっています。社員の2倍です。

— プロボノという働き方について教えてください。

山田:専門知識や技術を持ったプロフェッショナルの方が、ボランティアで私たちのチームに参加する働き方です。

みんな夢中になって1日を本職で過ごせるのが本当は良いです。だけど、みんながみんなそういう仕事をやれるわけではありません。

— 本職にモヤモヤを感じてファクトリエに参加していると?

山田:はい。本当にやりたいことではなかったり、モヤモヤを感じる会社や仕事だけれど、給料は良いという会社があるじゃないですか? だったら、ファクトリエに参加して、自分自身の気持ちをプラマイゼロにしたいという方が多いですね。

本職を終えた夜7時、8時以降に、楽しくやれる仲間と一緒に集まろう、みたいな動機で弊社に参加してくださっています。

商品の作り手・伝え手・使い手も幸せに。ものづくりの希望の星を目指す!

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— プロボノ以外ではどういう方々がいますか?

山田:学生のインターンが20人ほどいます。インターンの中には、すごく何かをやりたい熱い気持ちがあるけれど、何をやっていいかわからないという子も多いですね。そういう時に思うのが、熱量が高い人と一緒に働くことはすごく大切だということ。

— 熱い人と働くと好影響があるのですね?

山田:熱い人と働くと「やれないと思っていたけど、こういうこともできるんだ」という風に、“当たり前”のレベルが上がっていくんです。この場合、影響を受けるのは学生ですが、社会人の方も同じでしょう。

— レベルが上がる! 私もレベルアップしたいです。

山田:何を仕事にしようかと悩んでいる20代の人は、自分が本来やってみたかったことに対して、就業後や週末に力を注いでみるといいです。

仕事は仕事としてやりつつ、夜や週末に熱い人と出会うのもありです。そうやって柔軟に考えて行動を起こしていけば、良い人生を歩める気がします。

— そうした熱い学生や専門家を束ねる山田さんが目指す、今後の展望を教えてください。

山田:2つあります。1つは、日本がものづくりをできる状態にしておくこと。工場を残して、工場で働く人が活躍できるようにしておくことが大事だなと思っています。

もう1つは、その残した工場を良い環境にすることですね。

— どのようにして、工場の良い環境を維持しますか?

山田:ファクトリエは、集客・販売・生産といった一連の流れで作り手とお客さんを僕らはオンラインでつなぐので、工場には適正な利益を得てもらって良い環境が維持できます。工場側で値段を決めてもらい、僕らはその倍で売るのです。それでも流通がカットされているので消費者は通常よりも2/1以下で安く買えます。

— 工場で働く人も、ものを売る人も、買う人もハッピーになりますね!

山田:そうすることで、工場でいきいきと働く人を増やしていきたいです。例えば、エルメスの工場では職人さんは自分の好きな音楽を聞きながら、誇りをもって楽しく鞄を作っているんです。

— 日本でもノリノリな音楽を聴きながら服を作る?

山田:ノリノリな音楽かはわかりません(笑)。でも、僕らが成功して、ちゃんと儲かることを示せれば、日本のものづくり自体をパラダイムシフトできます。

そうして、僕がフランスで経験した「価値に対して、きちんとお金を払う」という消費スタイルに、変わることを願っています。

僕は希望の星をひとつ、ものづくりには作るべきだと思っているのです。
ファクトリエはまず、そういう星になっていきたいと思っています。

— プロフェッショナルたちが夜、会社に参加。工場で働く人の環境も整える。そうした働き方は、「世界に誇る“気高きメイドインジャパン”を復活させる」ため、そして「ものづくりの現場から世界一流ブランドを作る」ためなのですね。本日はありがとうございました!

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