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NAVERまとめは、ワイの育ての親や。連載「日本のWEBサービス」第一回・鳴海淳義(BuzzFeedJapan)

2017.05.01

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Work switch編集部です。今月から4回に渡り、「日本のWEBサービスは**だ!」をテーマとした連載がスタートします。第一回の論者は、BuzzFeedJapanの鳴海淳義氏です。
 
@narumiというペンネームで多くの媒体で執筆活動を展開し、まあまあ支持を得ている鳴海さん。そんな現在の鳴海さんを形作ったのは、国産のWEBサービスである「NAVERまとめ」であるとのこと。いったい、どういうことなのでしょうか? さっそくご覧ください。

■「日本のWEBサービスは」と言われても

はじめまして、@narumiと申します。ネットメディアにてエディターをやっています。今回寄稿するにあたって、いただいたお題は「日本のWEBサービスは**だ!」というものでした。

つまり日本のWEBサービス観を論じなければならないのですが、はて、日本のWEBサービスと言われても何も思い浮かばない。日本で生まれたWEBサービス? そんなのあったっけ?

ふと手元を見れば、この原稿はGoogleが提供するChromeというブラウザ上で、Google ドキュメントというアプリケーションを立ち上げて書いている。たぶん日本産ではない。

そもそもの原稿依頼は、サイトの担当者からFacebook Messengerでやってきた。Google Calendarでスケジュールを確認し、まあたぶん大丈夫であろうという提出日を伝えた。書き始めるのが難儀で、ついついTwitterに無駄なテキストを投稿し、他人のInstagramをだらだらと見て時間を費やした。

ふとブラウザで立ち上げているタブを見ると、Facebook Messenger、Facebook、Google Calendar、Trello、Google Analytics、Gmail、Twitter、Amazon、NAVERまとめ……。

海外発のサービスだらけだ。かろうじて1つだけ日本産なのはNAVERまとめだった。スマホのホーム画面を見ると、ほぼ同じ顔ぶれに「LINE」が加わった。NAVERまとめとLINEはいま僕が日常的に使っている数少ない「日本のWEBサービス」となるようだ。知らない人もいるかもしれないが、実はどちらも同じ会社が提供している。

NAVERまとめとブログ、ちょっとした仕事論について語ろうと思う。

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■「あんなの誰が作るんだ」と思ったけど

NAVERまとめは、2009年にローンチした。当時はNAVER Japanが提供する検索サービスの1つだった。検索結果をみんなの力でまとめようという趣旨のプロダクトだったと思う。私はIT系媒体の記者として会見に足を運び、実際に使ってみて記事を書いた。

自分が詳しい分野のことならば、既存の検索結果よりもわかりやすい「まとめページ」を作ることができる。地元のニッチな情報、大好きな芸能人のこと、楽しみながら作ったまとめは、自分にとっては既知のことだが、それをいまから知ろうとする人には価値があるリンク集となる。

Googleのページランクは被リンクに基づいた民主的な仕組みだが、ある意味、NAVERまとめもアプローチは違えど民主的で良いサービスだと思った。課題はそんなまとめページを誰が作るか、だ。僕らはみんな暇じゃないから、知らない誰かのためにせっせとまとめを作ったりはしない。

そんなわけで、良いサービスだが、作る人がいないだろう。僕は「NAVERまとめは絶対に流行らない」と思っていた。だって、誰があんなのボランティアで作るのか。

その後、NAVERまとめは、まとめページの評価にしたがって作成者にインセンティブを支払う制度を作った。それによって、「誰があんなの作るんだ問題」をあっさりとクリアした。もうそれこそ我先にと、どんどんまとめが作られるようになった。

そして徐々にだが、Googleで検索するとNAVERまとめのページが上位に出るようになった。しかも圧倒的に満足度が高い。福岡に出張するとき、どこで何を食べればいいのかと調べると、「福岡で絶対に行くべきお店10選」みたいな、そのとき知りたいと思っていたことがドンピシャで出るようになった。

友人の家にディナーに呼ばれたとき、Google検索をすると、「ホームパーティーに持っていくと喜ばれる2000円以下のワイン」なんていうNAVERまとめが出てくる。なるほど、たしかにNAVERまとめは検索サービスだと思った。僕はいまも気になることがあるとNAVERまとめ内を検索する習慣がある。
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■NAVERまとめは、“切り口”の一本勝負

2011年、勤めていた会社を辞め、記者を辞めた。次に入社する会社は決まっていたが(当時のライブドア)、1ヶ月ほどあった空白期間に夢中になったのはNAVERまとめだった。

ローンチ会見のときに触って以来、久々にまとめを作ってみると、記者時代に自分が取っていた企画メモに限りなく近いことに気がついた。

ある事柄を取材したい、追ってみたいと考えると、まず取り掛かるのは基本的な知識を得るところからだ。本を読んで、ネットを検索して、詳しそうな知人に聞く。そうやってわかったことを、適宜見出しを付けながらノートに書き込んでいく。

Getty Imagesから適当な画像を引っ張ってくれば、それはNAVERまとめそのものだった。識者のコメントを取れば記事になる。

「誰がこんなもの、無報酬で作るんだ」と以前は考えていたが、自分自身が興味を持っている対象について作ったNAVERまとめが人の目に触れて、「おもしろい」だの、「わかりやすい」だの反応が返ってくると、はっきり言って記者時代に何日もかけて書いた記事が読まれるのよりも嬉しかった。

なぜか? たぶん自分のなかにある「これおもしろいかも」というアンテナが、ダイレクトに評価された感じがするからだ。きっちりとした記事の状態にまで仕上げるほど、評価ポイントはわからなくなってくる。アンテナが良かったのか、取材対象が良かったのか、書き方が良かったのか、タイトルが目を引いたのか……いろいろな要素がある。

でもNAVERまとめにいくつかのリンクを貼って、関連するツイートをエンベッドして、おぼろげな文脈を形作るだけでは、何よりもそもそもの打ち出し角度がとても大事になる。いわゆる“切り口”の一本勝負という感じ。

月に10本ほど切り口の一本勝負を挑み、足し上げると月間数百万ページビューに達した。だんだんと企画ノートを作るのは上手くなっていき、自分のなかでそれをまとめ上げる方法論も作り上げた。

日常会話の1つのフレーズや、街なかで見かけた1つの景色から、どんな構成でまとめページを作り、どんなタイトルを付けるかまで頭のなかで完結できるようになった。自分の健康管理のために作ったまとめが後日、書籍化されたりもした(まさかのダイエット本)。

気づけばNAVERまとめ職人と呼ばれ、ネットの切り貼りの名人だと認識されはじめた。もう周りの誰も、自分が記者だったことは覚えていない。ものすごく楽しいが、ここらへんが潮時だと思うことにした。一次情報を扱うことにも飢えていた。

そこで2013年秋、まわりの友人たちから10年くらい遅れて、初めてブログをやってみることにした。海外のソフトウェアやサービスがたくさんあったが、空気を読んでlivedoor Blogという国産サービスを選んだ。

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■気がついたらグルメブロガーに

はじめは何を書いていいのかさえ、わからなかった。以前は客観的事実のみを書くマシーンとして鍛えられてきたし、直近は切り貼りばかり。どっちにしろ自分の言葉などは扱ってきていない。30歳半ばにしてようやくぽつりぽつりと日記のようなことを書きはじめた。

そしたらこれがやっぱり楽しい。自分で経験したことや、身近で起きた物事に対して、「あれってたぶん◯◯だよね。わからんけど」とか、、「この△△は最高に美味しいからみんな食べて」とか、ゆるいことを書いていい場所はいままでなかった。ソースはただの自分でしかないが、身軽だし、心地よい。

気づいたら1年ほど休まず更新していた。楽しみながらAdSenseとAmazonアフィリエイトで得られる金額を見ると、若者がプロブロガーなるものを目指す気持ちもわからなくもなかった。また企業から依頼を受けて記事広告を書いたのも貴重な経験だった。広告主の要望を汲み取って、かつ読者にも刺さる記事を1人で書くことはいままでのどんな仕事よりも難しかった。

広告記事は大変だ。通常の編集記事を書くよりもずっと困難だ。2種類のお客さんを同時に満足させなければいけないし、失敗はできない。だから勉強になるし、おもしろい。普通のライターがマイカーお父さんだとしたら、広告記事を作るクリエイターはハイヤーの運転手。それくらい責任も熟練度も違う。

ブログをはじめて2年ほどたった。気づいたら都内の飲食事情に詳しいグルメブロガーとして、月に何十本も連載を持つようになり、ダイエット本を出したのに徐々に太ってきた。これ以上書いてるとますます太る。それに書きすぎている。そろそろ切り口勝負の切り貼り稼業に戻ってもいいか…。

どこからか、米国からキュレーションの本家が上陸するという噂が聞こえてきた――。

■「日本のWEBサービスは僕の育ての親だ!」という人がたくさんいる

さて、あらためて自分のPCやスマホを見ると、海外のWEBサービスが並んでいる。だが、自分がいまの仕事をしているのは、日本のWEBサービスがあってこそだ。というより、ネットを主戦場に書いたり、編集したりという仕事をする上では欠かせないサービスが日本にはたくさん生まれている。それらに育てられてきた。

もしいまあなたがライター/レポーターになりたいなら、ブログはやっているほうが望ましいし、できれば優れた記事を書いて有名にでもなっていたほうがいい。そうすればどこかに雇われようとしたときに有利に働くし、なんなら雇われる必要すらない。

同僚がちょっといいことを言っていたので切り貼りしておく。

ネットのフラットさ。NAVERまとめ、ブログ、Pixiv、クックパッド、LINE LIVE、食べログ、nana、ニコニコ動画。どれかひとつを選んで明日から一歩を踏み出せば、きっと楽しいことが起きる。1年後には気づいたら何かのクリエイターになってる可能性なんて普通にある。

「日本のWEBサービスは僕の育ての親だ!」と胸を張って言える人が、すでにたくさんいる。そこが素晴らしいところだ。

<了>

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