1日8時間、それを週5日も続けていかなければいけない仕事。あなたは、そこに”楽しさ”を見出せていますか?働くことに対して、何かとネガティブなイメージを抱いてしまいがちですが、40年間も続く仕事人生、”楽しさ”を見出せなければ毎日がつまらないものになってしまうでしょう。

会社で働くことを避けようとしている人もいる中、会社で働くことに”楽しさ”を見出している人もいます。それが今回の話の主役である、中澤理香さん。現在、株式会社メルカリの広報として働く彼女ですが、その前はオフィスで仕事をしない働き方をしていました。

自由な働き方から一転、なぜ彼女はオフィスで働く選択をとったのでしょうか?これまで歩んできたキャリアから、”自分に合った働き方”について迫っていきます。

新卒で入社したミクシィで言われた言葉。「若いうちになんでもやってみなよ」が私を社会のレールから外してくれた

中澤:これまでのキャリアかぁ……(笑)。今は広報として働いてますけど、それまで色々な仕事を経験してきましたね。

新卒で入社したミクシィという会社では、主にディレクターをやっていて。企画を考えて、仕様書を書き、エンジニアやデザイナーと一緒にアプリやサイトを作っていくという仕事を3年間やっていました。結構作る側の仕事をしていたので、広報は全く関係なかったですね。

— 入社3年目が転職のタイミングとは聞きますけど、約3年でミクシィを辞めた理由って何だったのでしょうか?

中澤:ミクシィという会社自体はすごく好きだったんですけど、ちょうど3年目、20代も半ばというタイミングで他にも経験してみたいことがあるなと。元々、「人生で一度は海外に住んだり働いたりしてみたい」という思いが学生の頃からあったんです。

ただ、ぼーっとしている大学生だったので、留学にも行かず……。気づいたら普通に就職活動をして、就職して働いていました(笑)。

— (笑) 決められた社会のレールに乗ってきてしまった。

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中澤:そうなんです。でも、実際にミクシィに入社してみたら、様々なバックグラウンドを持っている人がいて。そもそも、4年で大学を卒業していない人も多かったし(笑)、ネトゲにはまって留年した人とか、30まで個人でトレーディングだけで食っていた人とか、海外の大学院に留学していたとか、いろんな人がいました。そうした人たちを見たときに、「焦ってレールに乗って会社に入る必要って、実はなかったのかな」と価値観が変わりました。

「あと1〜2年くらいは、やりたかったことに挑戦してもいいかも」そう思ったんです。それで、会社の人に「実は海外に行きたいんですよね」という話をしてみたら、想定外の答えが返ってきて。

止められたりするのかなーと思っていたら、いろんな人から「若いうちに行ったほうがいいよ」って言われたんです。たしかに、将来の結婚や出産の可能性も考えると、20代半ばといういまのうちに「海外に行く」を実行するのが合理的だな思い、納得ミクシィを辞めることを決めました。

フィリピンからサンフランシスコへ。留学をして実感した、「海外で働く」ということ

中澤:退職後はまず英語をブラッシュアップしたかったのでフィリピンに行き、セブ島(フィリピン)の英語学校で2ヶ月間くらい短期留学をしたり、マニラのスタートアップでちょっとだけインターンさせてもらったりしました。

— どんなスタートアップで働かれたんですか?

中澤:「YOYO」という、携帯電話所有者向けの報酬プラットフォームを運営している会社です。DeNA出身の方が創業した会社ということもあって、日本人とフィリピン人が両方いる面白い会社で。特に募集はしていなかったのですが、突撃でお願いしてみたら、快く許可していただけました。

留学の合間だったので2週間という短い期間だったのですが、webディレクターとしてサイトの改善をしたり、計測ツールを導入したりと色々トライさせてもらいました。短期間ながら、実際に働く体験ができたことで、色々と考え方も変わり、大きな収穫になりました。

フィリピンでの生活で実感したのは、自分が求めていたのは「海外で働く」ではなくて「グローバルな環境で働く」ことだったんだな、ということです。「海外」と行っても実際には一つの地域、「ローカル」の集まりなんですよね。それだけで海外を知ったとは言えないな、と。

私が体験したかったのは、いろんな国や文化のバックグラウンドを持つ人がいる、という環境。それは、例えば東京にいたとしても、グローバルな企業で働くことで実現できるのかな、と思いました。フィリピンの短期留学が終わり、日本に帰国したのですが、まだ次に何をするかの結論を出せず、どうしようかなと思っていたところ、サンフランシスコで「Tech House」という起業家志向の人たちが集まっているシェアハウス(今は終了)に友人から誘われて。

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— 次はサンフランシスコへ。

中澤:アメリカの場合、3カ月ぐらいの滞在であれば正式なビザがなくても行けるので、ちょっと行ってみようかなと。もともとネット業界の人間としてシリコンバレーやサンフランシスコに憧れもありましたし。

サンフランシスコでは働いてはいないですが、現地でしか使えないサービスやアプリを使って、ブログの記事を書いたりしていました。

突然送られてきたメッセージ。そこから開けた、Yelpのコミュニティマネージャーという道

中澤:サンフランシスコに滞在している間に、ミクシィ時代の同僚から、「ローカル情報の口コミサイト『Yelp』の日本法人の社員を募集しているらしいんだけど、興味ある?」というメッセージが突然送られてきて。
面白そうだったので紹介をお願いしたら、トントン拍子で事が運んでいき、Yelpの人から「本社へ遊びに来ない?」みたいなメールが来たんです。場所も住んでいたところから近かったので、気軽なノリで本社に遊びに行ってみることにしました。

そこで仕事内容や私の過去の経歴など色々と話をして。仕事内容はもちろんですが、会社の雰囲気が非常に刺激的でした。「ザ・サンフランシスコのスタートアップ!」というおしゃれなオフィスに、面接もカジュアルで、ソファーでコーヒー飲みながら話して。通り掛かる社員の人たちが「Hi!」って挨拶してくれたり、面接官が「彼女は日本から来てるんだよ!」ってみんなに紹介してくれたりして、おお!これがグローバル!と(笑)。

仕事の場所は東京なので元々希望していた海外ではなかったのですが、日本の社員はまだ1人しかいなくて、社内は全部英語。研修なんかで世界32ヶ国の同僚と集まる機会もある、と聞いて、これは自分が求めていた環境にぴったりだと思いました。結果的にYelpから内定をもらい、東京に戻って働くことになりました。

— ミクシィで働いていたときに、「海外で働きたい」と言っていたからこそ舞い込んできたご縁のような。

中澤:そうですね。働いていた当時から、海外に興味あるとは口に出していましたが、Yelpに誘ってもらえたのは本当に偶然ですね。たまたま、当時私が海外をぶらぶらしていて、英語もそこそこ出来たので声をかけてくれたんだと思います。

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— 実際、Yelpではどのような仕事をされていたのでしょうか?

中澤:Yelpでは「コミュニティマネージャー」として働かせてもらいました。「コミュニティマネージャーって何?」と思う人も多いかもしれませんが、一言で言えば、そのサービスの”ファンを増やす”ために色々な活動をしていくという業務内容です。

具体的には、自分はいちユーザーとして、毎日Yelpを使ったり、面白いお店や街を開拓したり、ユーザーとコミュニケーションしたり。リアルでのイベントも月1回以上、オフ会みたいな感じで、Yelpを少しでも好きになってもらえるようなイベントを開催してましたね。

— ちなみにオフィスはなかったんですよね……?

中澤:そうなんですよ。オフィスがないリモートワークの仕事で。「オフィスにいかなくていいなんて最高だね!」と人からよく言われたのですが(笑)私は元々リモートワークだからYelpに入ったわけではなくて、コミュニティマネージャーの仕事が面白そうだなと思って入ったら、リモートワークだったんです。なので、元々オフィスで働きたくないという思いがあったわけではありませんでした。

基本的には自宅やカフェなどで仕事して、毎朝Skypeで日本のチームや本社のチームと打ち合わせをしたり、週に何回か他社との打ち合わせやお店の開拓などにでかけたり。こんな感じのスタンスで仕事を進めていました。

リモートワークって自己管理能力がすごく問われるので、最初は大変な部分もあったんですけど、そこは会社も理解しているので、サポートしてくれていました。例えば、リモートワークの生産性を上げるためのTipsが共有されていたりして。1日に1回は外に出ましょう、ちゃんと着替えて1日をスタートしましょう、椅子と机は良いやつを使いましょう…といったような細かいアドバイスが色々共有されました。

もちろん日本でも一人ひとりが生産性を上げるために様々な工夫をしていると思うのですが、Yelpでは会社全体で生産性を上げるために何をすればいいのか、かなり細かくアドバイスしてくれるのが面白かったですね。

個人”ではなく”チーム”として評価されたい。リモートワークを通して気づいた、自分の中にある本当の想い

— Yelpではどのくらい働かれていたんですか?
中澤:1年半くらいですね。

— 転職しようと思ったきっかけって何だったのでしょうか?

中澤:Yelpの仕事もすごく面白かったんですけど、1年半、リモートワークをしてみて私にはあまり向いていないかな、と思って。人と働くのが好きだったので、やっぱりリモートは寂しいな、と(笑)「オフィスで働きたい」という思いが込み上げてきたんです。

上司にも話しましたが、「Yelpのコミュニティマネージャーの仕事は、基本的にオフィスにはいないので、そこが合わないのは残念だけど仕方がないね」という結論になりました。

あとは、Yelpで働いていたときにも広報やPRも仕事の一部としてやっていたのですが、自分にとってはすごく面白かったんですね。なので、そこをもっと掘り下げてみたいというのもありました。

オフィス

— 「人と働きたい」という思いが強かった。

中澤:そうですね。例えばデザイナーやエンジニアなど、集中して長く働くタイプの人は家の方が効率良いという人も多いと思うのですが、私の仕事の場合はコミュニケーションも多いですし、家庭的にも家で働かなければいけない事情があったわけではないので。

実際、オフィスで仕事をしない働き方をしてみると、逆に「オフィスってすごく効率的な場所だな」と気づくんですよ。やっぱり、みんなが一つの場所にいると、話が進むのはすごく早いです。あと、ネット回線も安定していますし、暖房や冷房も効いている(笑)すごく当たり前のことなんですけど、カフェで仕事をしていたりすると、そもそもネットワークが安定しているカフェって数も少ないですし、寒かったり、暑かったりもするし、お金もかかるし…。

それから、周りの人も仕事した方が、自分も頑張らなきゃという気持ちになって集中できる。すごく当たり前のことなんですが、改めて「オフィスって便利だな」と(笑)

— まさにオフィスで働くからこそ、得られる価値ですね。

中澤:それから、「チーム感」っていうのもすごく大事だなと思います。個人的には、自分個人が仕事の成果を達成したり、有名になったりすることよりも、自分の属するチームが何か成果を上げたり、評価をされたりする方がすごく嬉しいな、と過去の経験を振り返って思いました。

— 自分一人で働いていては、絶対に味わえないですからね。

中澤:上司やチームメイトなど、「この人のために頑張ろう」っていう思いは、仕事をしているときに感じると思うんですよ。例えば、「メンバーが病気で1週間休んでます」となっても、その人の分もフォローしてあげたり、喜んでもらうために頑張ったりする思いは、チームで働いているからこそ感じられるものなのかなと。働く上でのモチベーション維持にもなっています。

周りの人を変えてみる。その先に”やりたいこと”を形にするための道があるはず…

— とにかく「会社で働くこと」が好きだったと。

中澤:そうですね。それは新卒で入社したミクシィの影響が大きいかもしれません。ありがたいことに企画などわりと自由な仕事をさせてもらっていたので、「仕事ってこんなに面白いんだ」と思ったんです。

例えば、「こういうアプリ作ってみたいんです」と言ってみたら、「やってみなよ」と言って、やらせてくれる。そんな環境にいたので、仕事が辛いと思ったことはあまりなくて。今も、仕事自体はすごく面白いものだと思っています。会社で働いているけど、好きなことが出来ているのかな、という意識はあります。

私の場合、「どうしてもこういう仕事がしたい」というよりは、自分が好きな人たちと一緒に働きたい。そういう働き方の部分が満たされていれば、自分は満足なのかなと思っていいます。だからこそ、 様々なバックグランドを持ったすごい人たちが集まっているいまのメルカリは、最高に面白く刺激的な環境ですね。

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— では最後に。自分に合った働き方を実現していくためには何が大切だと思いますか?

中澤:私は「周りの人」が大事なのではないかなと思っています。私はよく自分の経歴を話すと「行動派だね」と言われるのですが、、元々はそんなに行動派じゃなかったんですよ。大学時代、「留学に行きたい」と思いつつ、結局行っていないですし(笑)

でも、ミクシィに入って自分の思考がどんどん変わっていったんですね。ミクシィや、ベンチャー業界の人って行動力のある人が多くて。そういう人たちを日々近くで見ているうちに、自分も「何かやりたいなら、行動に移さないと意味がない」と思うようになっていったんです。

そこから、少しずつですが興味がある社外の勉強会とかイベントに参加してみたり行ってみたり、会いたい人にはTwitterで突然連絡して会ってみたり。「やりたいことは口に出し、行動する」性格に徐々に変わっていきました。最初の会社で、行動力のある人や面白い人に出会えたからこそ、いま自分に合った働き方を実現できているのかもしれません。

だから、自分が「こうなりたいな」って思うような人の中にいれば、自然と自分の思いを叶えるための道が出来上がるんじゃないかと。「人は、その人の最も付き合いの多い5人の平均」というような言葉がありますが、もし、自分の”やりたいこと”を形にしたいのであれば、まずは周りの人を変えてみればいいんじゃないかと思います。

(取材・執筆:新國翔大)