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違反企業には禁固刑も! ゼロ残業大国ドイツの仕事事情

2017.04.28

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日本が“残業大国”であることは、今更述べるまでもないことでしょう。

例えば「プレミアムフライデー」制度の運用のされ方にも、日本の特徴が出ています。月末最後の金曜日は15時退社を推奨し、その分を余暇に当てることを推奨する「プレミアムフライデー」。しかし、導入した企業はわずか約2割弱という調査結果も。「クライアントが休んでいないので、自分たちだけが休むわけにはいかない」といった声も聞かれるなど、ハード面の整備だけではなかなか長時間労働の抑制は難しそうです。
 
政府も手をこまねいているわけではなく、この他にも様々な施策を打ち出しています。その一つが、時間外労働を可能とするいわゆる「36協定」(労働基準法第36条で定める届け出)の見直し議論。残業の上限について「特別な事情がある場合でも」月100時間まで、違反者には厳しい罰則を設ける政府案が提出され、法制に向けた議論がスタートしています。
 
一方で、日本とは対象的な労働環境ながらGDPで世界第四位につけているのがドイツです。日本の常識では考えられないほど就業時間が短く、残業が少なく、有給休暇率が高く、にもかかわらず景況は良好。両国の置かれている状況は異なるため一概には論じられない部分もあるものの、これほどまでに効率的に働き、成果を挙げている姿は注目に値します。今回は、そんな“ゼロ残業大国”ドイツの制度設計について掘り下げてみました。

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■労働基準法を厳格に運用するドイツ、抜け道だらけの日本

ドイツにも日本にも、労働基準法もしくはそれに準ずる名称の法律があります。ドイツのそれは、1994年に制定された「労働時間法」が該当します。

労働時間法では「労働者の労働日における労働時間は、8時間を超えてはならない」「小売業の営業時間が、平日および土曜日は6時から20時までに制限され、日曜日は、駅のキオスク等を除き営業が禁止される」といった制限があります。
 
一方、日本の労働基準法でも「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない」「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない」という基本事項があります。

こうしてみるとドイツと日本に差はないように感じます。しかしながら、ドイツの年平均実労働時間は1,370時間に対し、日本は1,730時間。実に45日分、日本のほうが多くの労働時間を割いている計算になります。労働時間法が制定され厳格に運用されているドイツ、36協定などの抜け道に加え、そもそも労働基準法を軽視する風潮がある日本という違いを感じざるを得ません。

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■有給をほとんど消化するドイツ、半分も消化しない日本

ドイツにも日本にも、有給休暇の付与義務があります。

ドイツの連邦休暇法では、「労働関係の継続が6か月以上の労働者は、1暦年につき24日以上の有給休暇を取得する権利を有する」という規定があります。一方、日本の労働基準法にも「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない」という条文があります。

しかし、ドイツではほとんどの社員が平均約30日間の有給休暇をほぼ100パーセント消化する一方、日本の有給休暇消化率は48.7パーセントにとどまります(厚生労働省、平成28年「就労条件総合調査」)。そもそも年次休暇の付与日数自体も日本は平均18.1日にとどまっており、いかに日本が「有給を消化しない、できない国」であるかが浮き彫りになっているといえるでしょう。

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■残業規制が厳しいドイツ、事実上青天井の日本

ドイツでは法律、産業別労使の間で結ばれる労働協約によって残業時間が厳しく制限されています。加えて「労働時間貯蓄制度」というものがあり、例えば1時間残業した日は別の日に1時間早く帰宅できるという制度があります。さらに、労基署にあたる「労働基準監督署」が毎日抜き打ちで企業訪問し、違反が悪質なものは最高180万円の罰金、経営者に1年の禁固刑が科されることも。
 
一方、日本はどうかといえば1人あたりの総実労働時間は昭和35年の2426時間(!)から一貫して減少トレンドにあるものの、それでも平成21年度では1,777時間。さらに、2015年12月に電通の女性社員が自殺したケースでは月間約105時間の残業が科されていたことが認定されており、過重労働の実態は各企業に根深くあることがうかがえます。

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■ドイツがバラ色なのか? 

以上のように両国を比較したとき、こと労働環境において「ドイツが圧倒的に素晴らしい」という印象はぬぐえません。

ドイツにも課題はあります。2015年1月に最低賃金法(時給8.5ユーロ)が導入された際には、その影響で17~18万人の失業者が出ました。中小企業にとっては人件費が膨らむ影響は大きく、賃上げしたものの労働時間の短縮や値上げなど工面せざるを得ないケースもあります。
 
また、両国の労働環境において大きく違うのは、移民の割合です。日本では人口の1.8%にすぎませんが、ドイツでは約19%が移民の背景を持っています。ドイツは歴史的に多くの移民を受け入れていますが、現在はメルケル首相の政策によりシリアを中心とした多くの難民受け入れを決定。多額の福祉予算が投じられたものの、安価な雇用の喪失や治安面の悪化などが社会問題となっています。

ただ、働き方という面においては、やはり学ぶべき点は多々あるといえるでしょう。長時間労働は評価されず、効率的に成果を出した社員が評価される。罰則がきっちり機能し、残業がかさめば使用者に禁固刑さえ課される、有給消化率はほぼ100パーセント……日本にとっては夢のような労働環境です。

ですが、これまで見てきたとおり、こうした労働環境は「制度がしっかり運用されているから」にほかなりません。日本の法制度つまりハード面において、ドイツのそれと大きく違う所はありません。あくまで、問題は運用するソフト面にあるといえます。

今後の働き方改革においても、様々な施策が打ち出されることが期待されます。しかし運用する側が規定を遵守し、違反者を厳しく取り締まるような環境ができなければ結果は同じこと。“正常な”運用がなされ、日本がドイツのような労働環境を手に入れる日は来るのでしょうか。

<了>

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