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なぜ、会社は従業員満足度の向上に着手すべきなのか?経営コンサルタントに訊く、「ES」の重要性

2016.03.08

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「CS(顧客満足度)」が企業の業績を左右すると言われてきていることは、多くの人が知っていることでしょう。その重要性は今も変わりありませんが、近年、注目を浴びているのが「ES(従業員満足度)」。

“企業は人なり”という言葉があるように、従業員の満足度を向上させることが企業の業績をアップさせることにつながる、と考えられているのです。そのような背景もあってか、多くの企業は従業員満足度向上のために、福利厚生の充実を図るようになってきました。

しかし、本当に従業員満足度を向上させることが業績の向上につながるのでしょうか。そこで今回、Work Switch編集部では、経営コンサルタントの小笠原隆夫さんに、企業が従業員満足度の向上によって得られるものを伺いました。

労働生産性と従業員満足度の間には、高い相関関係がある!ES向上が業績アップにつながるは事実だった

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— 率直に伺いますが、従業員満足度の向上と業績は相関関係があると思いますか?

小笠原:「従業員満足度」と生産性や業績の関係性については様々な調査や分析がされており、相関性を認めるものがある一方、あまり優位な差は認められないとされているものもあります。

「従業員満足の向上」とは、従業員が満足感を得られるような職場環境を、企業が戦略的に整備していくことですが、それは給料や福利厚生などの待遇面だけではなく、会社のビジョン、事業内容な方針、上司や部下、同僚との関係性、企業風土や文化、愛着や誇りのような個人的感情など、その内容は多岐にわたります。

この中の何に注目するかによって、業績との関係性に差が生まれるということはあるでしょう。また、“満足”という主観的な要素を尺度としていることも、いろいろな評価が生まれる一因であると思います。

— 確かに、言われてみればそうですね。

小笠原:このように、それぞれどんな要素を「従業員満足度」の対象として見るか、その満足度をどのような形で捉えるかによって、結果は少しずつ変わってきますが、例えば、生産性と満足度は相関しないと評価している調査の中でも、職務への満足が欠勤率や離職率の低さに結びついているとされるなど、「従業員満足度」がマイナスに作用しているという結果はほとんど見当たりません。

従業員満足度を「会社の総合的魅力」として幅広く捉えている調査では、労働生産性と従業員満足度の間には、高い相関関係があるという結果があります。

こんなことから、従業員満足度の向上と業績の間には一定の相関関係があると捉えることはでき、業績向上につなげる取り組みの中で、従業員満足が無視できない存在であることは間違いがないと思います。

満足度の高い組織の方が、コア人材の離職率が低い。少子高齢化が進む今、従業員満足度向上への着手は必然

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— なるほど。小笠原さんは、企業は従業員満足度の向上に力を入れるべき理由はどこにあると思っていますか?

小笠原:一つは、前述のとおり、従業員満足の向上に取り組むことで、従業員のモチベーションが高まってパフォーマンスが上がり、結果として会社の業績も上がるという事例が出てきているので、そこには当然、力を入れていくべきでしょう。

もう一点言えば、これからの日本では、少子高齢化が進む中で、将来の労働人口は着実に減少していきます。さらに一人ひとりの価値観が多様化し、必ずしも仕事中心の生き方ばかりでなく、ワークライフバランスを重視した職業観へ、徐々に意識が変化してきています。

こういう環境下で、従業員満足の視点をおろそかにしていると、人材の獲得および定着は今よりも確実に困難になっていきます。満足度の高い組織の方が、コア人材の離職率が低いという研究結果もあります。

企業の置かれた状況によって、その効果に差はあるでしょうが、優秀な人材を組織に定着させ、ナレッジの蓄積や組織の成長を図るためには、従業員満足度の向上を、必ず取り組むべき課題と認識することの方が自然ではないでしょうか。

— そうですね。実際、企業にはどんなメリットがありますか?

小笠原:やはり、自社の活動を従業員が肯定的に捉えるようになれば、様々なメリットがあると考えられます。人材の定着度が向上してノウハウの蓄積が可能になり、協働意識の向上がコミュニケーションの向上につながって生産性が上がり、業務上の不正防止といった効果や、従業員が自社の良さを発信することでの、会社の認知度アップや宣伝効果といったことも考えられるでしょう。

従業員満足度に占められる最も大きな要素は、「会社と従業員との相互信頼」ということです。経営者と従業員が信頼しあうことは、間違いなく従業員の働きがいにつながっていきます。これらがすべて関わり合うことで、最終的には業績の向上につながるはずです。

そういったことからも、やはり業績向上につながるということが、最も大きなメリットでしょう。

満足度調査をしても改善や向上は図れない。大切なのは会社と従業員の間に共有認識を作ること

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— もはや、従業員満足度の向上は企業が喫緊で取り組むべきことであると。ただ、多くの企業は何から始めればいいか分からないと思います。従業員満足度の向上にむけて、何を始めればいいと思いますか?

小笠原:従業員満足というと、まずは満足度調査をするというような話になりがちです。

もちろん定量的な現状把握は必要なことですが、いきなり調査をして、例えば「うちの会社の福利厚生の満足度が低い」などとわかっても、この情報が業績や生産性を高めることにつなげられるかといえば、それは難しいと思います。

また反対に、満足度が高いという結果が得られたとしても、言葉通りの「満足」では、今のままで良いということであり、改善や向上には結びつかないという見方できます。それは望ましいこととは言えません。

従業員満足の中には、モチベーションや満足感を高めることにつながる「動機づけ要因」と、不満の解消にはなるが満足感やモチベーションを高めることにつながらない「衛生要因」があります。これらのどの要素に対して、どんな取り組みをするのかは、ただ調査をすればわかるというものではありません。

ですから、まず行うべきことは、単に従業員の不満を解消するなどということではなく、経営者から一般社員までで、望ましい会社の姿の共通認識を作ることではないかと思います。

全社的にある程度の理解が得られたところで、初めて従業員満足の改善に取り組んでいくことができるのではないでしょうか。

「従業員満足の向上」は不満を解消するだけのものではない。大切なのは相互信頼のために何をすべきか

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— 最後に、従業員の満足度は企業にとって、どのようなものなのか、小笠原さんの考えを教えていただけないでしょうか?

小笠原:近年では多くの研究から、従業員満足が顧客満足にも影響を与えることがわかっています。こんなことから、従業員満足は企業価値を高めるための重要な経営指標の一つと位置づける企業が増えています。

ただし、「従業員満足の向上」は、単に従業員の不満を解消するということだけではありません。それだけでは、従業員たちは身の回りで起こっていることを、すぐに他人のせいや会社のせいにする、いわゆる他責に陥りがちになります。

従業員満足の向上のための要素は、非常に多岐に渡ります。まずは個人個人の気づきによる小さな取り組みであっても、それを継続していくことが重要になります。

「会社と従業員との相互信頼のためには何をすべきか」という視点が、従業員満足の向上のための取り組みの、第一歩になるのではないでしょうか。

【専門家情報】
小笠原 隆夫さん
2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表を務める。システム開発会社でのSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、組織が持つ特性を的確に見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して行っている。パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。

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